失神ゲーム




「やっぱさー、コツがあんだよ!」

「そうかな。タイミングの問題かと思うけど……」

学校からの帰り道、タケルと大輔は学校での出来事を検証していた。ここの所、中学校で流行りつつある『失神ゲーム』―――大きく息を吸った状態で胸を強く押されると、失神寸前の浮遊感が味わえるとあって、タケルの兄の通う中学では、既に何人かが怪我をする事態になっているにもかかわらず、危険な遊びは密かに蔓延していたのだ。そうして、中学で流行ってる事は、自然に小学校でも噂になり、今日はやり方を聞きかじった同級生が、好奇心から休み時間に試していたのだ。しかし、どこか緊張していたせいか思いきりが足らなかったのか失神には至らず、こうしてタケルと大輔は、そのやり方について飽かず語りつづけていた。実の所、二人とも興味が無いわけではなくて、ただ学校なんかでやったとして、もし怪我でもしたりと思うと踏みきれなかっただけなのだ。二人とも物思いに耽り、黙って家路を辿った。タケルのマンションの前まで来ると、静かに佇む人影が見えた。隣に肩を並べて歩いていた大輔が大きな声を上げた。

「おーい、賢。早かったじゃん!」

「学校からまっすぐ向かったんだ」

「にしても早え〜よ」

そして、3人でエレベータに乗り込む。今日は学校が早帰りなので、タケルの家に集まって、勉強会でもという事になったのだ。タケルは自分の斜め前に立ち、大輔と話しをする賢の横顔を盗み見た。そして、心の内で暗い思いつきが閃いたのを、必死で押し隠そうと努力した。どっちにしろ、大輔がいたのではその可能性はほぼ0であるのだから。目的の階に着き、3人はエレベータを降りた。タケルは無意識の内に、ゆっくりと歩を進めた。大きく深呼吸して玄関の鍵を開ける。

「適当にジュースかなんか持って来るよ」

キッチンでカップや何やら用意して、タケルはお盆を持ち、大輔と賢の待つ自分の部屋へ戻った。大輔は、なにやら興奮して捲くし立てている。意識して耳をそばだてると、どうやら大輔は、学校での例のゲームを賢に話して聞かせているようだった。賢は、さして興味もないというような素振りで聞いていた。タケルは大輔を窘めるつもりで、思わず口に出してしまった。

「一乗寺くんがそんな話しに興味あるとは思えないけど」

「それって……どういう意味?」

どうやら、賢のポイントを突いてしまったらしい。タケルは内心舌打ちをする。

「いや…何というか…君って優等生だし。ご両親に心配かけるような事する訳ないって意味で……」

微妙に語尾を濁して答えて、タケルは賢を真っ直ぐに見つめる。賢は眦をキリリと上げて、タケルを見つめ返した。気まずい沈黙。賢はついと傍らの大輔を振り返り、口早に何かを告げる。

「えっ?でも俺、やった事ないし……。下手したら頭打ったり、怪我すんぜ?」

大輔は、おろおろしながら賢を引き止める。その態度が余計に賢の負けん気を刺激するとも知らずに。タケルの静止も聞かず、賢は大輔を促した。

「大丈夫、ちょっとクラってするだけなんだろ?ほら!」

「駄目だってば!!!」




*****





ちょうどベッド上に乗り上げる形で、賢は体を投げ出していた。返事はなく、瞼は閉じられたまま。タケルと大輔の間に奇妙な沈黙が流れた。

「やべーよ……。気、失っちまった?」

自分のしでかした行為に、大輔は慌てふためいた。タケルは、恐る恐る賢の顔の近くに手のひらを翳し、呼吸を調べる。そして、ほっと息を吐いた。

「大丈夫……だと思う。多分、だけど」

「こういう時って、どうしたらいいんだろう?」

大輔は、だらりと力なく垂れた賢の手を握る。ほんの遊び、それが大事になってしまった。元はといえば、自分がこのような事態を引き起こしてしまった。あんな話題を振らなければこんな事にはならなかったのに。大輔は思い詰めた表情で立ち上がった。

「俺、どうしたらいいか聞いてくる。丈さんとか……光子郎さんとか。多分このゲームの事とか知ってるだろうから」

直す方法わかったら、すぐにD‐ターミナルに送るからなと言い残して、大輔は走って玄関をすり抜けて行った。タケルは部屋の中で、うろうろと歩きまわった。こうして放っておけば、すぐに目が覚めるんじゃないだろうか。ベッドに寝かされている賢は、まるで普通に眠ってるかのようで、こうして二人部屋の中に取り残されていても、別段大事なんかじゃないみたいで。
賢の体を、軽く揺り動かしてみた。すると、頬に掛かっていた髪がはらりと落ちた。薄く開けた唇から赤く舌が覗いている。

(うわ…なんだか…これって。まずいんじゃないの?)

賢の意識がないのをいい事に、指先で舌に触れた。柔かでぬめった感触。閉じられた瞼、びっしりと長い睫が頬に影を落とす。じっと見つめていたらいつのまにかタケルは、賢の唇に吸い寄せられていた。薄く開けられた唇を割って舌を潜り込ませたら、賢は微かにうめいたようだった。タケルは賢から唇を離して、じっと見下ろした。制服の前を広げる。シャツのボタンを開いて行くと、白くて滑々した肌が覗いた。タケルは詰めていた息を吐いた。胸元に唇を寄せると、賢の体温が伝わって来る。緩やかに上下する胸板。薄く色づいた小さな突起を舌で刺激する。こりこりとした感触をしばらく楽しんで、舌を移動させる。滑らかな体のライン、下腹部の柔らかな茂み。タケルは酷く後ろめたい気持ちで、行為を更にエスカレートさせる。その後ろめたさが、より一層タケルを興奮させた。力ないその部分を緩く握り込む。手の中で微かに反応したように思えて、タケルは心の底から歓喜した。

(いつもは素っ気無い君なのにね)

手で扱いて、舌で舐め上げ、咥内に迎え入れて緩く吸い上げる。そうやって夢中で行為に没頭していると、微かに賢のうめく声が上がったので、タケルは性急に追い上げた。

「んんっ?あ……なに?やっ!?」

賢の意識が戻る。そのまま行為を止めずに強く吸い上げたら、呆気なく賢はタケルの咥内に放出してしまった。青臭い液体に喉を塞がれて、タケルは咽た。強張った賢の体がゆっくりと弛緩する。タケルは息を整えて、ゆっくりと賢の体をひっくり返した。奥まった部分にタケルが指を這わせると、賢は体を震わせた。









「何はともあれ、意識が戻って良かったよな?結局解決方法は聞けず仕舞いだったけどよ」

小学校が早帰りだからといって、中学校もそうだとは限らず。散々走りまわった大輔が戻ってきた時には、賢は意識を取り戻していた。

「……でもなんか変。これも気失った後遺症とか?」

大輔は賢の顔を覗き込む。賢は慌てて色づいた頬を両手で隠した。結局その日の勉強会は散々で、3人の間で「失神ゲーム」という言葉は以来、禁忌となったのはいうまでもない。







END






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