砂礫の楽園







ロフトベッドの上。食後の運動だと、飛びはねるミノモンのぼくに、賢ちゃんはちょっとだけ厳しい口調で、注意する。
「駄目じゃないか」
けれど、ぼくを見つめる眼差しはとっても優しくて。昔、一緒に旅をした時の賢ちゃんそのもの。そして、ぼくを抱く腕も。暖かくて柔らかい。ぼくがずっと待ち望んでいた賢ちゃんが、今、ぼくの目の前にいる。
あの頃のきみは、まだあまりに幼すぎたから。きみが大きくなる日を、ぼくがどれだけ待ち望んだことか。
ね?賢ちゃん。知ってる?きみに初めて出会ったあの瞬間から。ぼくがきみに抱いた感情。受け入れてくれるよね?

そんな晩だった。あの女が突然、ぼくらの部屋に現れたのは。

賢ちゃんのことを用なしだと言った。
幼年期のぼくを、賢ちゃんはかばうようにして、強く抱き締める。

賢ちゃんは。ぼくの大事な賢ちゃんは、用なしなんかじゃない。
叫びたい気持ちがいっぱいになって。賢ちゃんを守るどころか、守られている自分が嫌になって。

暗闇の中。あの女が消えた後。賢ちゃんの手が震えているのが伝わって。
こんな時でも、賢ちゃんは、大丈夫だよ。なんてぼくを安心させようと微笑むから。
「賢ちゃん…」
小刻に震えるその躯を、抱き締めることが、できたなら。
「…ワームモン?」
いや、違うと、賢ちゃんの戸惑う声がぼくの下から聞こえて。
「賢…ちゃん?」
ぼくの手は確かに賢ちゃんの頬に触れていた。いつものよじ登る感じではなくて。人間が触れるのと、同じように。
「進化したのか?」
たぶんと、ぼくはうなずいて。同時にそっと賢ちゃんのことを抱き寄せてみる。いつも賢ちゃんが、ぼくにしてくれるみたいに。うんと優しく。壊れないように。
でも本当は、それとは相反する感情もぼくの中には渦巻いていて。
「…っん、苦しいよ。ワーム…」
もがく賢ちゃんのパジャマの裾から、ぼくはそっと手を忍ばせた。
「…ヤっ。何?」
滑らかですべすべな賢ちゃんの肌。その触り心地にうっとりしながら、ぼくは大きく賢ちゃんの胸を撫で回す。
「大丈夫、心配しないで」
ぼくの爪が賢ちゃんの可愛い二つの胸の突起を霞めた時。ぴくんっと賢ちゃんの躯が小さく跳ねた。
「ヤだ。変だよ。こんなの」
ぼくにしがみつく賢ちゃんがすごく愛しくて。ぼくは何度も賢ちゃんの乳首を爪で弾いたりひっかいたりして。時折、賢ちゃんのから甘い溜め息みたいな声が漏れ初めて。その開いた唇の間から、ぼくは自分の長い舌を割り込ませて、賢ちゃんの舌に絡めてみる。
「…っん!」
口内を這い回る細いぼくの舌に、始めこそは抵抗を示した賢ちゃんだったけど。しだいに賢ちゃんの躯の力が抜けて。同時にぎこちなくだけど、賢ちゃんの舌がぼくの舌に絡んできて。賢ちゃんの躯が熱くなってくるのがわかる。
「ワーム…モン」
けだるそうにぼくの名を呼ぶ賢ちゃん。
軽く浮いた賢ちゃんの腰の下に、ぼくの腕を入れて引き寄せれば、賢ちゃんの高まり始めた部分がぼくのお腹に触れて。ぼくの体は、その熱を感じ、新たな進化を遂げる。
「賢ちゃん…」
賢ちゃんのパジャマのズボンに爪をひっかけ、賢ちゃんの肌を傷つけないようにと、膝ぐらいまで滑らせる。ぼくの体から出てきた触手の一部を、賢ちゃんの下着の間からするりと忍びこませると、賢ちゃんのソレに触れた。
「ヤ…」
少しぬめりをおびたぼくの触手を賢ちゃんの根本から巻き付けて。腰の引ける賢ちゃんをぐいっと抱き寄せ、ぼくは賢ちゃんの口付けする。
じんわりと汗ばんだ賢ちゃんの額に張り付いた髪を掻き分けると、瞳をうるませた賢ちゃんと視線がぶつかった。

「賢ちゃん…」
「…ワームモン」

賢ちゃんがぼくに微笑んでくれたように見えたのは、きっと、ぼくの気のせいなんかじゃないよね?

賢ちゃんのパジャマの上着のボタンに爪を掛ける。けれど、ぼくの爪は不器用で、思うように、ボタンがはずせない。
「賢ちゃん…」
困ったように、ぼくが呟くと、賢ちゃんは。ぷちん…と。その綺麗な指先で一つ、また一つと前をはだけさせて。
「…ワームモン」
ぼくの首に両腕を絡ませて、ぎゅっとぼくに躯を密着させた。
「冷たくて、気持ちイイ」
体温を持たないぼくは、賢ちゃんにとって、巨大なアイス枕の代わりなのか。それでも、賢ちゃんに抱きつかれて、ぼくの体にあるデータが、また違う何かを呼び出してしまう。

ね、賢ちゃん。もういいよね?












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