手負いの雉に幸福な死を 2







「いい子だね。やさしくしてあげる」

羞恥なんてとうに感じなくなってたと思っていたのに、思わず頬が熱くなる。そ の言葉通りに戸惑うことなく侵入した指が、僕の中をゆっくりと探る。
焼けつくような痛み、先ほどとは比べ物にならない異物感。

「こうしてゆっくり慣らしていけば、そんな痛くはないからね」

黙って顎を引いて、それが返事の変わり。ある一点を掠められて、無意識に体が 撥ねて。それでこんな行為に意味があることを知る。
その反応を見て満足そうに微笑む相手は更に僕を踊らせる。異物感が不意に消え て、その隙に大きく安堵の息を吐く。
と思う間もなく、熱い昂ぶりが僕のそこに押し当てられて。ゆっくりと押し広げ られる感触。強張る体。




死よりも辛いと思われるなら、もはや生きてゆく事になんの意味も無く。
途切れ途切れに息を吐いて、少しでも痛みから逃れようと空しい努力も、その度 に奥まで押し込まれて、一体なんの為の。
無意識に腰が引けてなんとか逃れようとずり上がる体を、幾度もまるで人形のよ うに引き摺られる。脚を開いて、あられもない姿。自然、零れる涙。
圧迫されて胸の奥から吐き出される息が、段々と荒くなる。苦しくて痛いのに中 断される事のない行為。
涙は絶え間無く、痛みで思わず漏れる悲鳴で喉は枯れ。不自然な姿勢で腰を抱え られて、打ちつけられるその部分が段々感覚を失なってゆく。
痛みと痺れと。最後まで僕を悩ませる羞恥と絶望。

「ねえ、段々良くなってきた?」

その言葉に閉じてた目を開く。僕を見下ろす瞳とかち合って、頭が上手く働かな くてぼんやり見つめてしまう。
するとその目が細められて、腰を支えていた手が僕の前に伸ばされた。
途端に頭のてっぺんからつま先までまるで電気が走ったみたく感じられて、枯れ た喉の奥から声が絞り出される。
異物感いっそう強く感じられ、それでも僕は目の前が白く見えなくなるみたいで 。
もう何も感じられず、何も見えず、考える事さえ放棄して。僕は長く尾を引く悲 鳴を上げて、それが自分の喉から発せられてる事にどこか驚きを覚えていた。ふ っと意識が遠くなる瞬間のあまりの開放感に、どこか至上の幸福を感じながら。







目が覚めたら、僕は見知らぬ部屋のベッドの上で一人ぼっち。置きあがろうと腕 を突っぱねたものの、力が抜けてシーツに突っ伏した。
下半身、痛みが走って自由にならない。諦めてうつ伏せのまま、辺りを観察する ことにして。厚くて重そうなカーテンが引かれた窓が側にあって、その隙間から 日差しが漏れている。ここに着いた時、日が暮れかかっていた。だとしたら、夜 が明けて明くる日になったと言う事か。
泣いてたママを思い出して、どんな思いで長い夜を過ごしたんだろうかと胸が痛 んだ。全て子供を失った母親は、どんな思いで生きて行くのだろう。僕は平気だ から。絶対に死なないつもり。どんな屈辱も耐えて、必ず生きて家に戻るから。 固く誓う。自由に動かない体が軋んで身動きさえ取れず、そんな決意なんて一瞬 の後に吹き飛びそうになるけど。シーツをぎゅっと掴んで、荒ぶる感情を押さえ 込む。
喉がぎゅっと締めつけられたようで苦しくて、短い呼吸を繰り返しながら。



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