夜のエーテル








ノスタルジア―


学校を早退して、ふらふら時間を潰す。秋の終わりのうららかな陽気。制服の上着を脱いでたたんで腕に。人気のない昼下がりの公園、僕はゆっくり奥へと進む。家からも学校からも遠く離れた、名の通った大きな公園。知り合いに出会う心配もないから、僕は漸くここで一息つく。職業不詳の人がちらほら歩いてるのを避けて、僕はもっと奥まで足を伸ばす。
暫く歩いてると、胃の辺りがむかむかしてきて、僕は息苦しさにうんざりする。
すこしでも早く楽になりたい。どうして僕はいつも……こうなんだろう。

胸の下を強く圧迫すれば、簡単な事。僕は胃の内容物を全て吐き出した。人気の全くないトイレの洗面所、僕は冷たい水で口の中を漱ぎ、顔を洗った。折り曲げていた体を起してハンカチで顔を拭って、その時初めて後ろに立っていた人の気配に気付くなんて。

「具合悪そうだけど、大丈夫?」
「……吐いたらすっきりしましたから」
「そうなんだ?」

にっこりと相貌崩すその顔、どこか懐かしいなんて感じてしまう。明るい瞳の色が…どこか僕のかつての親友に似ていたからだって気づいたのは、ビデオカメラの前に引出されてからだった。




ノスタルジア2―


「いつもどんな所で遊んでるの?良く行くお店は?」

矢継ぎ早に質問攻め、適当に誤魔化しながら答えて行くと。

「は?オカズって……」

僕を囲む4,5人の男達は、笑いを堪えきれず噴き出してしまう。それで漸く理解できた。何で僕なんかがこんな風に。僕に興味を持ったわけじゃなくて、この制服とか……容姿に。商品化された子供っていう、所謂レッテル貼りが行なわれたわけだ。そういう事なら……。

「じゃ、質問を変えるね。どのくらいのペースでオ○ニーするの?」
「……前回したのいつか思い出せないくらい…のペース……かな。あんまりそういうの興味ないんで。あの……もういいですか?」

ありがとうって、またあの笑顔で。輪の中から抜けると、僕の後にやはり年若い男が質問攻めにあう。帰ろうとして、気が付いた。上着を預かってもらったままだった事を。撮影の邪魔をしちゃいけないと思って端で待つ間に聞く、朗々と響く声。振り向いた笑顔、僕の手の中に押し込まれた封筒。

「あ。あの。すいません、制服……」
「ああ。君の名前教えてよ。そしたら返してあげるからさ」

胸の奥がずきんと痛んだ。なんでだろう。この人は別に僕に興味を持ったわけじゃないのに。






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